マンションを賃貸に出していますが、売ることはできますか?
転勤や海外赴任などの理由から、住んでいた分譲マンションを賃貸に出すことは珍しくありません。マンションを資産として持ち続けながら家賃収入を得られるのは大きなメリットと言えます。しかし、事情が変わり「売却したい」となったとき、どのような点に気をつけるべきなのでしょう。
借主様と交わした契約が重要なポイント
賃貸に出しているマンションの売却にはクリアすべき課題があります。最も大きな課題は、借主(賃借人)様と貸主であるオーナー様との間でどのような借家契約を結んでいるかということです。
通常の借家契約(普通借家契約)では、借主様の保護が強く定められています。たとえば、借主様が継続して住むことを希望している場合、貸主様から解約や更新を拒絶することは、正当な事由がない限りできません。
貸主様側の正当な事由として認められるものとしては、建物の老朽化が進んでいるため共有部分が崩落する危険があり建て替えは急務、といった致し方ないケースに限られます。「売却したいから更新はしない。出ていってほしい」などの個人的な理由は受け入れられないわけです。
そこで分譲マンションの賃貸で用いられるのが「定期借家」です。定期借家は、一定の契約期間に達すれば契約を終了させることができる制度で、貸主様と借主様の双方が合意すれば契約の延長も可能になっています。住宅の有効活用を促すため、2000年に誕生しました。
たとえば、「転勤から戻ってくる3年後に、また同じ部屋に住みたい」という希望があるなら、3年間の定期借家で賃貸に出せばいいわけです。契約満了時に借主様は退去しますから、事情が変わってマンションを売却する場合もスムーズに話が進みます。また、前述のように、契約を更新して貸し続けることも可能です。
一方、不動産会社にとっては、更新ができないという条件の定期借家では、借主様が見つけにくくなるという側面があります。そのため、不動産会社から積極的に「定期借家にしましょう」とは言いにくいのも事実です。
オーナーチェンジのメリットとデメリット
一方、借主と通常の借家契約を結んでいる場合はどうでしょう。交渉しても借主が退去に応じない場合、「オーナーチェンジ」という手段をとります。「オーナーチェンジ」とは、現在入居中の借主はそのままの状態で物件を売買することです。賃貸借契約は継続したまま、物件のオーナー(所有者)が代わることからこのように呼ばれるようになりました。
オーナーチェンジ物件には入居者がいるため、購入しても住むことができません。したがって、オーナーチェンジ物件は家賃収入を得るための投資用物件ということになります。
残念なことに、投資用の物件は、居住用物件の相場よりも低めの取引価格になることが多いようです。投資用の物件を探しているお客様は居住用物件を探しているお客様より少ないこと、よほど立地に恵まれた人気のあるマンションでない限り投資家が期待するような利回りを生み出さないこと、そして、購入に際して通常の住宅ローンは使えないのがその主な理由です。
たとえば、居住用物件なら2千万円で売却できる物件を月10万円の家賃で賃貸に出していたとします。利回りは年6%ですから、投資用の物件として2千万円で購入する投資家は皆無。売却するためには、居住用物件の相場よりかなり割り引かなければなりません。つまり、売主様が損をしてしまう可能性が高いわけです。
売却で損をするリスクを減らすためには、タイミングが重要になります。最適のタイミングとは、借主から退去予告が来たとき。実際のところ、次に貸し出すためにリフォームの見積もりを取ったところ数十万円かかるので、「ならばこのタイミングで売ってしまおう」と考えるオーナーさんが多く、よくあるケースです。
借主がいない空室の状態なら、オーナーチェンジ物件ではなく、通常の居住用物件として売却できます。このため、私たちがお客様に現況、賃貸中の物件を売却相談された際はまず、「借主様が退去する予定がありますか?」とお伺いしています。
「なぜ今手放すのか」を考えてみる
普通借家契約で賃貸に出しているマンションでも売却することは可能です。しかし、繰り返しになりますが、相場よりかなり価格を下げないと難しいのは事実。どうしても今売らなければいけないのか、よく考えていただくことをお勧めします。
加えて、大規模なマンションの場合、他と同じようなタイミングで売りに出すとマンション内での価格競争に巻き込まれることになり、悪条件を強いられることにもなりかねません。逆に、他に売り物件がない状態なら有利に事を運ぶことができます。こうしたタイミングを考慮することも売却では重要と言えるでしょう。
弊社ではセカンドオピニオンの相談を無料で承っています。現状に疑問や不満を感じている売主様、ぜひ一度ご相談ください。
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